2016年12月8日木曜日

『No Knowledge Clipboard』採録

2016年11月23日の第23回文学フリマで配付した『No Knowledge Clipboard』の本文を以下採録します(一部表現修正)。

No Knowledge Productは女性アイドル情報誌『What Is Idol?』を中心に活動しているサークルです。アイドルブームの隆盛に逆らうように、『What Is Idol?』は2013年8月のVol.9を最後に発行が止まっていましたが、この2016年11月文フリを機に復活しようと目論んでいました。
が、何もできませんでした。さっき(現在一般入場開始後2分経過)カタログを見たら、
対象をライブエンターテインメントに拡大し活動を再開する。
って書いてあるじゃないですか。結果的に大嘘になりました。ごめんなさい。ひどい。

自分個人としては、この方アイドルヲタとしてはほぼ引退状態で、現場はPrizmmy☆(ガールズダンス&ボーカルユニットです!!)とその妹分プリズム☆メイツのみという楽しみ方になっていました。Prizmmy☆はプリティーリズムシリーズから生まれたユニットですが、今年初めに同じくプリティーリズムからスピンアウトした「キンプリ」(KING OF PRISM)が、大きなブームになってしまったことには自分の心を多少なりともざわつかせました。キンプリから女児向けホビー作品としてのプリティーリズムシリーズが顧みられることはそれほど多くなく、いきおいPrizmmy☆という存在にこれによりフォーカスが当たることもまれでした。その中でも言及が比較的多かったのはキンプリ作品中の「EZ DO DANCE」のモーションが、当時中学生だったPrizmmy☆の振り付けから起こされたので脚部を中心に女性的な動きが目についた、といった文脈でしょうか。土曜の朝にテレビ東京を点けていて『プリティーリズム・オーロラドリーム』をたまたま見てしまったことに大きな意味づけをしている身からすると、キンプリ後という地点からプリティーリズムを捉えざるを得ないいま、Prizmmy☆をきちんと位置づけたいと思っています(たとえば『ユリイカ』のアイドルアニメ特集でも、Prizmmy☆への言及は不十分と言わざるを得ません)。

…とか言ってるぐらいなら本を作れよ!!!!ということに尽きますね。まったくそのとおりです。
Prizmmy☆について書き留めておきたいことは大きく以下の3つです。

  1. Prizmmy☆という存在を(少なくともプリティーリズムシリーズの中に)きちんと位置づける。
  2. Prizmmy☆は、プリティーリズムシリーズが「レインボーライブ」で完結したときに解散するはずのプロモーションユニットだったのではないか?という仮説から、実際にはそうならずにその後3年近く活動を続けていることについて検討する。
  3. デビュー当時小学生だったメンバーが高校生となり個人活動の幅を広げていることを、プリティーリズムシリーズに通底するメッセージに照らしつつ把握し、今後(future)を展望する。とりわけセーラームーンミュージカルによって俳優としての才能を開花させているかりん(髙橋果鈴)を中心に。


ということを早く形にしないといけません。
ディアマイフューチャー!!!!

2016年12月3日土曜日

i☆Risという向こう岸[2]

不思議と悔しいという気持ちは抱かなかった。彼女たちみずから話題にしていたが、i☆Risの6人はみなすでに成人しているということも大きいのかもしれない。思うに、芸能活動への「覚悟」は年齢と正比例するのではないか。グループ活動をしながらやりたいことを見つけるというあり方はここ数年のうちに珍しくなくなったが、中高生が言うのと二十歳が言うのとでは当然意味が異なる。グループに仕立てられてしまったのが幼いころであれば、活動の中で自分の針路を定めていくのは必然的なことだ。一方、ある程度(どの程度?)の年齢になれば、グループで活動していくことに覚悟が必要になるだろう。6人が告白した葛藤からもそれが察せられる。若井友希の「i☆Risはわたしのやりたいことではなかった」というひと言がそうだし、さらに芹澤優が「わたしは一人でアイドルをやりたかった」と若干おちゃらけて言ったのはむしろ茶化そうとしている分よけいに切実なものを感じた。周囲の人間の思惑、戦略を感じ取りながら、傍目には恵まれていると見られつつ、決して安易でも平坦でない道を進むことを選び取る―そんな営為を若い人に課すなど酷なことだ。幼ければ幼いほどなおさらだ。満員の武道館は、7000人も集っているにもかかわらず狭く見えた。

2016年12月1日木曜日

i☆Risという向こう岸

11月25日金曜日、日本武道館を埋めた観客とそのステージに立つi☆Risを見て、虚心にうらやましいと思った。目視で正確に数えられるほどしか客の来ないデビュー当時から四年で武道館にまでたどり着くという、できすぎなぐらいのサクセスストーリーに。
i☆Risがプリパラという作品を得たことで大きく力を得ることになったというのは周知のとおり。だが売ろうというバックヤードの努力に応えるのも並大抵なことではない。アンコール後のMCでメンバーがi☆Risというグループは必ずしも志望する道ではなかったということを涙ながらに述懐できたのは、彼女たちが成功したからこそだ。
衒いなく素直な直球を投げ込んでくることができるのもうらやみたくなる理由でもある。声優であるからこそ、正統派のアイドルを「自然に」「演じる」ことができる。小さな差異にやたらと意味づけをしようとする態度とは正反対のものだ。そこにプリパラで開いた、実年齢よりも若い歌詞の世界観を表現できるという境地が加わるから、さらに立派なアイドルだなあと思う。ここまで立派だと客席の自分は距離感について考える必要がなくなる。ただのオーディエンスとして眺めていられるという安心感。
金曜日にもかかわらず武道館は満員と言って差し支えなかった。今後メンバーの出身地のホールを中心とした全国ツアーが開かれる。無理をした最初の武道館が結果的にキャリアハイになってしまう心配もない。
いちばんうらやましいのは、この成功譚に伴走できたファンかもしれない。物語はまだ続いていくだろう。自分はもはやそんな体験をすることはないだろうという根拠の不確かな諦念がある。同じような風景だった向こう岸の町が、みるみる発展していくのを眺めているようだ。もっともこちら側も流れる時間は同じだ。

2016年11月23日水曜日

2016年11月23日Prizmmy☆・プリズム☆メイツワンマンライブ





 9月に引き続き、11月のPrizmmy☆&プリズム☆メイツワンマンライブはメンバープロデュース。第1部はひな、第2部はれいな。終わってみればどれもメンバーの個性が色濃く出たライブになった。
ひなプロデュースは“Hina 's Radio Show”と告知されていたが、フタを開けてみればむしろテレビバラエティの公開収録さながらだった(その名も「ヒナナンデス!」)。ベージュのニットセットアップとベレー帽で出てきたMC HINAの立ち振る舞いはまるで若かりしころの黒柳徹子のよう。他のメンバーを悪気なくいじり(?)ながら、自分の言いたいことも差し挟んでいくスタイル。心なしか顔立ちも似ているかもしれない。アイス早食い対決はお客さんも交えた戦いとなり、客席の女子小中学生がステージに上がっていっしょにアイスを食べていたのはPrizmmy☆のライブらしい光景だった。企画メインのこの第1部はライブというよりファンミーティング的で、メンバーの関係性を楽しむものだったがバラエティ番組も出演者の関係性をインストールした上で見るものだ。
第2部は対照的。洋楽邦楽取り混ぜたヒット曲をカバーするというアナウンスはあったが、久保玲奈のプロデュースワークがそこで終わるわけはなく。J☆Dee'Zを卒業したばかりのMeikと、同じく彼女の友人のSHOTA・Tomokaが彼女のオファーで招かれ、オープニングから激しくダンス。映像もれいな自身の手になるものだったという(すべてを制作したかどうかは不明)。とりわけ、ダンス・スタイル・キッズを中心としたキッズダンス界隈の中で、多くの人が好敵手と目していたPrizmmy☆とJ☆Dee'Zの競演が(Meikはそこを離れたとはいえ)こうした形でついに実現したのにはある種の感慨を抱かざるをえない。れいなと彼女がオファーした計4人のダンスは、れいなの目指す先を示しているようでもあった。
そしてカバー曲ライブ。白眉はみれい。「赤いスイートピー」から果実姉妹による「淋しい熱帯魚」の流れでは悲鳴のような歓声さえ聞こえた。もともと歌唱力はプリズム☆メイツ一安定していたが、この2曲はそれに潜む可憐さを引き出していた。れいなはおそらくみれいの歌唱を高く評価しているのだろうし、きょう(第1部でさなのみぞおちにパンチを食らわしていた姿も含めて)振り幅が最も大きかったのはみれいだと思う。
メンバーの個性を勘案した選曲だったのは見てのとおりだが、ソロだとさらに際立つ。ひなの中森明菜とあいりのきゃりーぱみゅぱみゅは絶好球というべきセレクト。ぜひひなには全曲中森明菜のひとりベストテンをやってほしい。ところどころれいなが自分が歌いたいという理由で自信の歌唱を差し挟んでいるような気がするが、それは言うまでもなくプロデューサー特権(それがTLCと宇多田ヒカルとレディガガなので言うことがない)。
とにかく、4回のメンバープロデュースライブすべてにおいて、メンバーの意図を感じることができた。第2部の最後にひなは「2部は詰め詰めなので1部はゆるくした」と言っていたが、そうした調整が利くのもメンバーが互いを理解しているからこそ。バラバラの個性が互いを解り合い高め合うというユニット活動の理想的な現れと、4人の高いクリエイティビティを目にすることができた、得難く、かつこの4人だから得られた一連のライブだった。